先月、黒斑山から眺めた浅間山。山体の造形は無骨で単純明快、とても強烈で印象深いものでした。なので、今回はとっても気になる浅間山を訪ねることにしました。車坂峠からの往復では前回のコースと多くの部分で重複してしまうので、浅間山荘から訪問することにしましたよ。車坂峠に向かう道から道標に従って右折し、未舗装の道路を4キロも走ると浅間山荘に到着です。
浅間山荘の駐車場は有料で500円となります。但し、下山後に温泉施設を利用すれば割引になるようです。早朝は閉まっているので下山後にフロントで駐車料金を払います。
駐車場奥には公衆トイレがあって24時間使用できます。トイレ前の木製の鳥居が登山道入口となります。標高は1400メートル程度。
鳥居をくぐるとプレハブの指導所と登山届ポストや注意事項等が記載された看板などがあります。浅間山は活火山なので熟読しておいたほうが良いでしょう。
登山道兼林道のような小広い道を進みます。蛇堀川を渡り返しながらだらだらとした道を歩いていきます。で、この辺りから眺める川面がオレンジ色に染まっており度肝を抜かれます。鉄分が含まれているためと思いますです。・・・多分、飲んだら痩せられるかな。
歩む道がようやく登山道らしくなってくると再び鳥居が出現。
この場所で直接二の鳥居へ向かう道と不動の滝を経由する道とに二分します。どちらを歩いても時間的に大差はないようですが、多少二の鳥居に直接向かうほうが早いようですね。

登りでは折角なので不動の滝を経由することにします。なので、沢沿いの道を暫く辿ります。
不動の滝に到着。あまり大きくはありませんが、とっても品の良い滝なので寄っていく価値は十分にあると思います。滝壺の近辺まで近寄ることも出来ます。
不動の滝から階段状の登山道を登っていくと、間もなく二の鳥居に到着です。丸太や切り株のベンチが整っているので休憩に良い場所です。
二の鳥居で火山館までの行程の半分ちょっとといったところ。浅間山荘から火山館までは4キロの道のりです。標高は1660メートル程度。
笹の多いゆるやかな登山道をジグザグに登っていきます。周囲の樹林も美しい場所です。
登山道は人気のある山岳なのでよく踏まれています。幅広で歩き易い登山道です。
谷間の暗がりからようやく開放されると、陽光あふれる平坦地に飛び出します。
一幅の絵画のような風景が続きます。
この辺りでは秋の花が最後の主張を繰り広げております。
振り返ると雲海の上に八ヶ岳の峰々。
周辺の平坦地はカモシカ平と言うそうです。とても気持の良い草原が続きます。
西側はトーミの頭へと続く外輪山の壁。豪快な眺めです。
前方に浅間山が見えてきましたよ。左側はトーミの頭へと至る懸崖、そして右側は牙山の豪壮な岩壁。まるで仁王門のような二山の間を抜けて湯の平へと向かいます。天然の伽藍配置のようですね。浅間山はまだまだ遠いのです。まだまだ高いのです。
日本の山とは俄に信じ難い雰囲気の牙山。黒斑山から見下ろすと小さな突起物にしか見えないのですが、こっから眺めるとインパクト大です。
火山館手前で荒涼とした沢底をトラバースします。奥には仙人岳が見えています。
硫黄の臭気も強く浅間山が生きていることを実感出来る場所となっていますよ。
沢からひと登りで火山館に到着。
火山館を過ぎて湯の平へと進みます。トーミの頭と黒斑山が仲良く並んでいます。
蛇骨岳から仙人岳が樹間越しに望めます。
草すべりコースとの分岐点に到着。ここでも火山に対する注意事項が列記されています。
先月は様々な花で溢れかえっていた分岐周辺ですが、半月が過ぎる間にすっかり秋の気配で満たされていました。
草すべりコース方面です。正面のトーミの頭へと向かって愚直に真っ直ぐ突き進む、とってもアホらしくて素敵なコースです。
湯の平でA氏と遭遇。まだ午前9時なのに車坂峠から黒斑、Jバンド、浅間山と登ってきたんだってさ。う〜む、どう足掻いても敵わんぞ。おじさんはまだなんにも登ってませんがな・・・。
大抵、A氏と山で出くわすと調子狂います。なんか意識しちゃってペースが乱れるわけですなぁ。俺だって、やるときゃ、やるんだよぉ〜、などと力んでしまうので、大凡、A氏と別れて1時間以内には、登山道際で朽ち果ててしまうのであった。そんなわけで、ハフハフと無謀なペースでJバンド分岐通過です。
周囲の樹高が低くなってきたので黒斑山などが視界に入るようになりました。この辺りはまだまだ緩傾斜です。
樹林帯が終わる辺りです。目の前いっぱいに前掛山の姿が広がります。でっかいです。
樹林帯が切れる辺りから徐々に傾斜も強まっていきます。登山道も土壌が安定した歩き易い道から、次第に荒涼とした溶岩と火山灰の道へと変化していきます。
振り返ると・・・おぉ〜、すっげえ絶景ですがな。湯の平を前景にしてトーミの頭、黒斑山、蛇骨岳、仙人岳と屏風のように外輪山が連なります。
前掛山の山体を延々と巻くように登山道は続きます。逸る心を抑えてここはゆっくりとマイペースで登るのが良いですな。
高いのか低いのかさっぱりわからん前掛山。大きさを判断する樹木などが無いので、スケール感覚が狂ってしまうのです。
けれども振り返れば確実に高度を上げていることが判りますね。
・・・つ、辛い。A氏はここを鼻歌歌いながら駆け上がっていったのであろうか。標高が上がるに従って傾斜も強まっていきます。
行く手の景色が単調で全然変わりませんがなぁ。火山の登山道らしいと言えばそれまでですが、転石や砂混じりのグズグズした登山道は、コツを掴んで上手に歩かないと結構疲労します。
登山道は前掛山の山体を斜上していく感じなので、北側の嬬恋方面の景色も見えてきましたよ。眼下に広がるのは鬼押出しの溶岩流。
ようやく浅間山の肩と呼べるような場所に着きましたよ。ここから浅間山の本体はすぐ目の前に聳えていますが、残念ながら立入は禁止です。自己責任ならば良いでしょというものではなく、法律により罰せられるというレベル。
あぁ〜、ところが皆さんロープを跨いでせっせと浅間山本峰に向かっておりますよ。小さな子供さん達の視線が気にならないのでしょうかねぇ。こりゃ、あれです、登山者の品格の問題でありますなぁ〜。ここは我慢して前掛山へと向かいます。
なんという景観でしょうか。火星探査船で不時着したような気分であります。湯の平の広大さにも驚いたものですが、前掛山は山頂直下にこんなに広い火口原を擁していたのですね。
避難シェルター付近から望む浅間山本峰。最高地点はこっからは見えません。巨大な砂利山であります。
こちらが前掛山で外輪山の一部となっています。ある意味、この寂寥感は日本離れした迫力ですね。
前掛山へと向かう登山者や下りてくる登山者で外輪山の稜線は賑わっています。
山頂付近にも沢山の登山者が見えますよ。
浅間山と前掛山に挟まれた平坦地。標高2420メートル程度です。登るにも下りるにも、丁度休憩に良い場所となっています。
実際に噴火したらどの程度役立つのやら。周囲に転がっている火山弾や噴石などを見る限り・・・駄目でしょうなぁ〜。
外輪山を辿って前掛山へと向かいます。急登もなくゆるやかな道を進めば前掛山です。
前掛山に到着。道標は一応「浅間山」になっていますね。標高は2524メートルです。後方に見える浅間山火口付近では、標高2568メートルなので、こちらはちょっとだけ低いです。
前掛山の山頂は案外狭い。休憩は皆さん斜面からずり落ちそうになりながらという感じ。
で、前掛山より先はやっぱり立入禁止。こっから小浅間山まで登山道解禁されていれば結構面白いかもしれんです。火口付近を避けるようにして南面寄りに開削するとか、なんとかなんないのでしょうか。
最も外側に位置する外輪山はかつての大火山の名残。いまではすっかり緑に覆われ思索に耽っているようです。
前掛山を含む外輪山は狭義の意味では活動休止中。でも蒸気が噴出している箇所もあるし、現役復帰の意志は満々みたいな。
浅間山はこれから幾度も火するんでしょうかねぇ〜。何万年か後に富士山より高くなっていたら素晴らしい。見れないけど。
雲海より抜きん出て聳えるこの土砂の集合体は、頭上を蟻のように忙しなく動きまわる人間達をどのように思っているのかな。
日本の中級山岳も侮りがたし。天晴な景観でありますなぁ〜。
赤岳様、横岳様、こっち側に口をぱっくりと開けて笑っている硫黄岳様の面々で御座います。
おぉ〜、雲の波濤を掻き分けて槍ヶ岳様がこっちを見ておりますぞ。有難や〜。
先月に訪問した篭ノ塔山や烏帽子岳がちらっと見えてきましたよ。烏帽子から浅間山まで火山という聖火リレーで、延々と形作られた山塊なのですね。

狭い斜面で休憩中。ちょっと、疲れちゃったかな・・・。
浅間山の天候としては穏やかな部類になるのでしょうが、遮るものがないので風は案外強いのです。
マジな強風が吹いたら、ちっとおっかねぇ稜線ですな。そのまま飛んでいっちゃうかもしらんです。
前掛山を振り返ります。山と言うよりも火口壁の一部みたいな感じです。
浅間山ファミリーの広大さをしみじみと実感しながら下山します。
北方向も綺麗な雲海です。
沢山の登山者によって、まるで遊歩道のように綺麗に踏み固められています。
槍ヶ鞘、トーミの頭、黒斑山、蛇骨岳、仙人岳と続く浅間の外輪山。
前掛山を盟主とした内側の外輪山。陥没した後に浅間山が噴出したので、標高においても脇役となってしまいましたよ。
んで、こっちが現役バリバリの浅間山。山として美しいかどうかは微妙。但し、現場の親方みたいな無言の迫力はあります。
避難シェルターに到着。本格的に噴火したら、こんなところで息を潜めているよりも、さっさと駆け下りたほうが良さそうにも思えます。
雲海を見下ろしながら下山開始です。
避難シェルターから湯の平まで、脚に自信のある方ならばかなりの短時間で下りられると思います。
本日はまだまだ沢山の方が登って来られるので、道を譲りながらのんびりと下山しました。全般、ザレた道なので下山時の転倒などには注意しましょう。
湯の平を過ぎて火山館でひとやすみ。ここでも常連さんというのが存在するようですが、あんまり周囲を見回しながら大声で語られると嫌味な感じですなぁ〜。まぁ、何処にでもこ〜いう輩は生息してますが。はい、はい、あんたはスゴイ。

トーミの頭と牙山のスナップ。なんていうか、神が宿る山という感じで荘厳な雰囲気で御座います。

てくてくと平坦路を歩いていきます。浅間山荘と火山館の間もあんまり急坂が無いのです。地形はそれなりに急峻なところもありますから、道の取り付け方がうまいのでしょうね。
秋の花々と外輪山。もうじきカラマツが黄葉すれば、短い秋もフィナーレですね。

帰路は不動の滝を経由せずに下山します。沢沿いの道ではないので、とても歩き易い道です。
分岐点に到着。ここから幅広の道を浅間山荘まで下ります。
浅間山で見た花々
アキノキリンソウ
イブキボウフウ
ハクサンフウロ
ノアザミ
ヤマハハコ
イタドリ
ウツボグサ
ゴマナっぽい花
キオン

ミソガワソウとトリカブト
●駐車場
浅間山荘の有料駐車場。終日停めて500円です。但し、温泉利用すると割引になるようです。
●トイレ
浅間山荘登山口の公衆トイレ、火山館など。
●登山道
全般、湯の平まではよく整備された登山道です。浅間山に取り付くと石ころと砂礫が多い、火山らしいザレた道へと変化します。登りは大丈夫ですが、下山時は滑ったり転倒などに注意が必要な登山道です。尚、登山道以外は立入禁止、火口半径500メートル以内は一切立入禁止となっています。唯一、小諸口からのみ前掛山まで登山が可能です。
●備考
浅間山では数えきれない程の登山者と遭遇しましたよ。やはり百名山は全国区なのですね。
●主観的所要時間
浅間山荘駐車場から浅間山の往復は6時間30分程度(休憩含まず)。現在は火山活動レベルが1なので前掛山まで登山可能です。
この記事に関する内容はあくまで主観的な印象を綴ったものです。
もし、登ってみようかなと思われたら、面倒でも最新の情報を収集されるようにお願いします。
登山道は季節により変化します。年数を経れば様変わりもしてしまいます。
無理をしない山行で楽しい想い出を沢山つくってくださいね。