滑川温泉から汗かき東大巓へと向かうのが正統派と十分理解しつつも、なにしろ温泉宿泊でホッコリし過ぎたために、登高意欲が甚だしく減退。急遽、一旦米沢市に出てから天元台のロープウェイとリフトを乗り継いでの計画としました。駐車場で観光客スタイルから一泊二日の避難小屋泊まりスタイルに変身。・・・が、いろいろと準備にもたつきハイキング開始は午後からとなってしまいましたとさ。
ロープウェイから更に三本のリフトを駆使して到着したのは1800mを越える地点の北望台。リフト終点には登山案内板と簡素なベンチがありました。
登山道としか表記されていない殺風景な標識に導かれて登山開始です。
観光客の方々は思わず騙されたぁ〜と後悔しそうなくらい本格的な山道が続きます。

二股はかもしか展望台へと向かうのが直進、人形石へのショートカットが左です。東大巓へと向かうので左の道へと進みます。
30分ちょっとで樹林帯を抜けて広々とした空間に飛びだします。正面には梵天岩と西吾妻方面が大きく望めます。
岩屑を敷き詰めた広場の一端にある巨大な岩が人形石。オベリスクと表現するにはちと高さが足りませんなぁ〜。
人形石の先で中吾妻、東大巓、東吾妻の山々とご対面。う〜ん、滅茶苦茶遠いやないかい。
道は中吾妻山を正面に望みながら、右折して草原の中を下って行きます。
池塘も点在していてなかなかの風景です。
あまりに美しい情景に歩みを進めるよりも立ち止まる時間のほうがどうしても長くなってしまいます。
最後のチングルマに間にあいました。東北の山々での最盛期は6月頃、なので7月半ばに見られたのはちょっと嬉しいですね。中大巓東面と滑川コースの水場周辺ではチングルマが遅くまで見られるようです。
イワカガミ。こちらも最盛期は過ぎた感じですね。
中大巓と藤十郎の鞍部には湿原が広がっていますが、いろは沼という名前なので、説明する際に西吾妻のものと混同しそうです。ここから望む東大巓はとても遠く感じます。
いろは沼周辺は木道が整備されていますが、土壌流失が痛々しい雰囲気です。木道整備以前の登山者による破壊ですが、復元には時間がかかりそう。それでも周辺に広がる無数の池塘に心が和みます。
いろは沼を過ぎると藤十郎に向かって穏やかに登って行きますが、大した標高差はないので楽しく歩けます。
吾妻連峰の縦走路はなにか鬱蒼とした森林のイメージだったのですが、中大巓と東大巓の間は、展望に優れた高原散歩のような雰囲気。次々に現れる湿原には木道が敷設されているので、泥まみれにもならず快適に歩けます。
大きいのやら小さいのやら、数えきれないほどの池塘。
こんな眺めが飽きるほど延々と続いています。なんて贅沢な縦走路なんでしょう。
中吾妻山と夏雲を写す池塘。

ヤケノママという奇妙な地名を示す道標。指し示す方向は草深い踏み跡があるだけ。ヤケノママとは渓谷沿いの崖から噴気が出ている場所で、後日、ネットで調べましたがかなり上級者向けのルートのようですね。
藤十郎は定かでないピークが3つほど続いているような地形。ピークとはいうものの、ご覧通り小さな丘陵のような穏やかさ。

藤十郎を示す道標。山頂という雰囲気ではないですね。
朽ちた道標の破片が登山道の傍らに置かれていました。
藤十郎から望む東大巓。楯状火山の典型的な特徴を示しています。山頂から周囲に広がる広大な緩斜面が弥兵衛平です。
藤十郎先の鞍部からは東大巓に向かって緩やかに登って行きます。
ワタスゲが風に揺らています。
中吾妻山も随分近くなってきました。
振り返れば、中大巓がいつのまにか遙か彼方へ。
正面に東大巓の山頂を望みながらのゆる〜い登り。広大な湿原が次々に現れます。
午後の夏雲が眩しいです。
いろは沼と同様に旧登山道の部分はすっかり荒廃しています。現在はご覧のように復元作業が行われています。長い時間が必要ではありますが、ワタスゲ揺れる美しい湿原に戻ると良いですね。
右側が荒れた旧道部分で、左側に新たに木道が敷設されています。
縦走路と明月荘との分岐に到着。右が東大巓方面で、左が明月荘を経て滑川温泉や立岩方面へと続く道。

分岐から背の低い樹林帯の中に続く木道を暫く辿ると明月荘に着きます。2階建ての立派な避難小屋で、内部も小綺麗に清掃されており大切に使われているようですね。玄関正面にトイレが2つも併設されており頼りになる小屋です。
小屋に到着後、まず水場へ直行です。水場へと向かう道からは一切経山が堂々とした姿で望めます。
花々の間を流れる金明水の水場。冷たくて大変おいしい水でした。・・・が、明月荘と水場の往復はそれなりに距離があるので大変。
夕食を済ませてから湿原散策。夕暮れの湿原は哲学と瞑想の空間。
悲しくなってしまう程の美しい暮色です。池塘が銀の鏡のようですね。
夕暮れの東大巓。これだけの美しい景観を長い時間をかけて作ってくれた職人さんです。
毎日繰り返される当たり前の光景なのでしょうが、思わず過去を反省したくなるほどに心が揺さぶられます。・・・あの時はごめんなさい。

自己反省しながら就寝した翌朝は、日の出と共に朝の湿原散策。弥兵衛平に朝日が昇ります。そして、振り返ると西吾妻山の上空には月。
明星湖に眩い朝日が射し込みます。
弥兵衛平の一日が朝日とともに始まります。

写真では伝えきれないのですが、明月荘から立岩へと続く登山道は広大な弥兵衛平の一角を貫いて行きます。まっすぐに何処までも延びる木道の両側には、数えきれないほど無数の池塘が散在しています。
湿原の端に建つ立岩方面への道標。この先で長かった木道も終わり普通の登山道となります。
湿原の池塘に雲の流れが映ります。
明月荘周辺には東大巓の西斜面では見られなかった大きな池塘が沢山あります。池塘というより沼と呼んだほうが的を得ているかも。
さて、一晩お世話になった明月荘を後にして、東大巓へと向かいます。
東大巓への登路から弥兵衛平を見下ろします。背後には雲海の上に蔵王連峰が見えています。
ここが縦走路と東大巓山頂への分岐です。山頂まではここから1分程度。なので、億劫がらずに訪問しましょう。
・・・地味な山頂ここに極まれり。なんも見えませんがな。
山頂の東側に広がる吾妻連峰東側の眺め。往路を引き返すにしてもこの眺めだけは拝見しましょうね。
ここからでも一切経山の噴気が確認出来ます。
こちらは中吾妻山方面。あの標高で登山道が無いなんて、あぁ〜、なんて勿体無いことなんでしょうか。継森、無名峰、中吾妻山と三座とも1900mを越える標高。東北地方では貴重な高さと思うのですが。
縦走路から振り返る東大巓。う〜ん、こんもりした藪にしか見えませぬぞ。

東大巓付近の縦走路の様子です。人形石から明月荘までの楽チン散策路とは異なって、吾妻連峰のもうひとつの側面が味わえます。東大巓から一切経山への縦走路は、場所によって笹被りとどろんこ道に耐えなければなりません。
丁度、シャクナゲ開花のシーズンですね。
東大巓から再び人形石に戻ります。マイカー登山の宿命なので仕方ないのです。
昨日よりも花が開いてきましたよ。
東大巓の湿原から望む中大巓はまだまだ遠いです。
東大巓を振り返ります。一帯は山と言うよりも高原のように穏やかな緩斜面です。
中大巓、梵天岩、西吾妻山と仲良く連なる峰々。
田植えのシーズンですな。
このあたりから東大巓からのゆるい下降は一段落。道は藤十郎のエリアとなってきます。
が、藤十郎界隈も抜きん出た山があるわけでもなく、登山道は上手くピークを迂回してしまうので、辛くなるような登下降はありません。
左が中吾妻山方面、右が西吾妻山方面。吾妻の峰々はどれもがゆったりと伸びやかです。
藤十郎付近に広がる小湿原。池塘を見ても感動しなくなる自分がちょっと情けないですなぁ〜。これだけ素晴らしい景観が続くと、さすがに感性も鈍化してしまうようで・・・。
藤十郎から振り返って望む東大巓。こうして眺めると、山というよりも高原ですね。雲ノ平、美ヶ原、霧ヶ峰、八幡平などと親戚関係かと。
神様の田んぼが続きます。
すっかり遠くなってきた東大巓と中吾妻山方面。
そして、ようやく近づいてきた中大巓。
吾妻連峰は花の山でした。嬉しい誤算です。
いろは沼から望む中大巓と人形石。
穏やかだった縦走路もいろは沼を過ぎると、ようやく登山らしい急登となります。
人形石へと登り返す途中から見たいろは沼と藤十郎。
東大巓を中心に広がる吾妻の山々。
人形石に戻りました。
さて、ここからはリフト乗り場まで別ルートを辿ります。正面には梵天岩が増々大きく望めます。
ワタスゲ揺れる湿原と中吾妻の山塊。
分岐です。リフト乗り場へと戻る道と西吾妻山方面へと分かれます。
登りついた中大巓の肩はかもしか展望台と呼ばれています。
かもしか展望台からは飯豊山や米沢市の市街地が望めます。ここからひと下りでリフト乗り場へと到着です。
さて、リフトに乗って下山ですが、リフト下を歩いている登山者のほうがかなり早いです。次回は往復券買わずに歩いてみようかな。
●駐車場
ロープウェイ駅に無料の駐車場があります。
●トイレ
ロープウェイ駅、リフト乗り場、避難小屋(明月荘)にあります。
●登山道
危険な場所はありませんが、悪天候時は濡れた木道で滑らないように。また、湿原内には絶対に立ち入らないように注意しましょう。登山者が少ないので木道で昼寝も出来ます。尾瀬でやったら踏まれますなぁ〜。
●備考
リフト終点から人形石までは沢山の登山者と出会いました。が、東大巓方面は極端に人影が少なくなりました。初日は登山者1名と、二日目は登山者3名と出会いました。尚、避難小屋で宿泊した登山者は8名です。稜線の湿原は長年の登山者による踏み荒らしで随分傷んでしまいましたが、地元有志のボランティアなど、沢山の方々の努力で木道敷設や植生回復の努力が続けられています。とても有難いことです。
●主観的所要時間
リフト終点から東大巓までの往復は4時間程度(休憩含まず)。更に弥兵衛平まで訪問すると5時間以上は見ておきたいです。
健脚な方ならば避難小屋に宿泊せずに日帰り可能ですが、弥兵衛平周辺は時間を気にしながら訪れると、
折角の魅力も半減してしまいそうです。
この記事に関する内容はあくまで主観的な印象を綴ったものです。
もし、登ってみようかなと思われたら、面倒でも最新の情報を収集されるようにお願いします。
登山道は季節により変化します。年数を経れば様変わりもしてしまいます。
無理をしない山行で楽しい想い出を沢山つくってくださいね。